◇檸檬のころ
どこか懐かしい、青春小説。
田舎の高校を舞台にした、短編集。そこには感動的なドラマがあるわけでもなく、ヒーローが存在するわけでもない。ただ、どこにでもあったような普通がありふれている。
どちらかと言えば目立たないような人たちに光を当てて、書いている。それなのに、見事にすくい上げている。こんな文章を書ける人を、私は他に知らない。
この『檸檬のころ』を"懐かしい"と感じるのは、実はごく一部の世代なのかも知れない。
多分、私と同世代の高校生たち──。
▼豊島ミホ